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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)2459号 判決 1967年8月30日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は原判決を取り消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

被控訴代理人は請求の原因及び控訴人の主張に対する答弁として次のとおり述べた。

一、別紙一土地目録記載の土地(以下本件土地という)は被控訴人の所有であるところ、控訴人は本件土地上に別紙二建物目録記載の建物(以下本件建物という)を所有し、右土地を占有しているから、被控訴人は右土地所有権にもとずき控訴人に対し本件建物を収去して本件土地を明け渡すことを求める。

二、被控訴人が本件土地所有権を取得した事由は次のとおりである。

(一)  本件土地はもと控訴人の所有(但し登記簿上は右土地目録(一)の土地中合筆前の(4)(5)の土地、同(二)の土地は控訴人の子新海昌信名義、同(四)の土地は控訴人の妻新海福代名義)であつたが、被控訴人は昭和三五年二月一八日控訴人から(但し昌信名義のものはその法定代理人たる控訴人及び新海福代から、福代名義のものは同人から。以下本件土地の取引については同じ)代金坪当り金四、〇〇〇円計二四六万五、二四〇円、控訴人の負担すべき費用二、〇〇〇円合計二四六万七、二四〇円で買い受けて所有権を取得し、右代金は当時被控訴人が控訴人に対して有した別紙三債権目録記載の債権中対当額で合意の上相殺して決済し、翌一九日その旨所有権取得登記を了した。

(二)  仮に右所有権取得が通常の売買ではないとしても、被控訴人は控訴人に対し当時前項目録記載の債権を有したので昭和三五年二月一八日控訴人は被控訴人に対し、右債権中前示二四六万七、二四〇円を昭和三五年一二月末日までに弁済することを約するとともに右債権を担保するため本件土地を被控訴人に譲渡し、翌一九日売買名義で所有権移転登記を経由したところ、控訴人は約旨に反して右債務を期限に弁済しなかつたから、これによつて被控訴人は確定的に本件土地の所有権を取得した。

三、控訴人主張の二の事実中本件売買が通謀虚偽表示であること控訴人が被控訴人に別紙四反対債権目録記載の各反対債権を有すること、被控訴人が控訴人に建物改造費六七万一、一五〇円を貸与したことは否認する。その余の事実は知らない。

控訴代理人は答弁及び主張として次のとおり述べた。

一、被控訴人主張の事実中本件土地が控訴人の所有(但し一部は被控訴人主張のとおり昌信及び福代の所有)であつたこと、これにつき被控訴人主張の登記がなされていること、当時控訴人が被控訴人に対しその主張の債務を負担していたこと、被控訴人主張の日に被控訴人と控訴人間に被控訴人主張の本件土地売買契約がなされたこと、本件土地上に控訴人が本件建物を所有して土地を占有していることは認めるが、その余の事実は否認する。

二、被控訴人主張の売買契約は通謀虚偽表示であつて、無効である。すなわち当時控訴人は被控訴人に対し前記債務を負担していたほか、他にも四八〇万円にのぼる債務を負担していたので、被控訴人は他の債権者からの追及を免れるため本件土地を被控訴人名義にすることをすすめ、控訴人もこれに応じ当事者相通じて虚偽の売買契約をしたのである。右売買が仮装であることは次の事実からも明らかである。すなわち

(一)  当時控訴人は被控訴人に対し別紙四反対債権目録記載の反対債権を有したので、控訴人が被控訴人に負担する債務は右反対債権で決済すればほとんど消滅する関係にあつたこと。

(二)  当時本件土地の時価は坪当り金一万二、〇〇〇円であり、かつ容易に他に処分し得たのに、これをわずか坪当り金四、〇〇〇円で売却するはずはないこと。

(三)  控訴人は織布業をやめ本件土地上の本件建物をアパートに改造し、これによつて生計をたてようとし、そのための改造費六七万一、一五〇円はそのころ被控訴人から借り受けたものであるから、その敷地である本件土地を被控訴人に売り渡し、地上の建物を収去しなければならないような取りきめをするはずがないこと。

当事者双方の証拠の提出、援用、認否は被控訴代理人において当審における被控訴人本人尋問の結果を援用し、乙第九号証の成立は知らないと述べ、控訴代理人において乙第九号証を提出し、当審における証人新海福代の証言及び控訴人本人尋問の結果を援用したほか、原判決事実らんに記載されたところと同一であるから、ここにこれを引用する(但し原判決五枚目裏三行目「証人高橋道夫、同滝秋雄、原告本人の各尋問を求め」とあるのを「証人高橋道夫、同滝秋雄の各証言及び原告本人尋問の結果を援用し」と、同一〇枚目裏三行目、四行目に「証人黄鳳通、同松本高、同新海玉蔵、同杉浦豊並に被告本人の各尋問を求め」とあるのを「証人黄鳳道、同松本高、同新海玉蔵、同杉浦豊の各証言及び被告本人尋問の結果を援用し」と訂正し、同一〇枚目裏五行目「甲号各証の成立を認め」とあるのを「甲第八号証は被告の署名押印部分の成立を認める、その余の甲号各証の成立を認める」と訂正する)。

理由

別紙一土地目録記載の土地(本件土地)がもと控訴人の所有(但し登記簿上は右土地目録(一)の土地中合筆前の(4)(5)の土地、同(二)の土地は控訴人の子新海昌信所有名義、同(四)の土地は控訴人の妻新海福代所有名義)であつたこと、これにつき被控訴人のため昭和三五年二月一九日同月一八日付売買を原因として所有権移転登記のなされていることは当事者間に争ない。

被控訴人は本件土地は右同日控訴人から(但し昌信名義のものはその法定代理人たる控訴人及び新海福代から、福代名義のものは同人から。以下本件土地の取引については同じ)これを買い受けて所有権を取得したものであり、これが通常の売買でないとしても被控訴人において控訴人から譲渡担保として所有権の移転を受け、その弁済期の徒過により確定的に所有権を取得したと主張する。右売買契約自体の存することは控訴人の認めるところであるが、その趣旨は売買契約の形式があるだけで実は通謀虚偽表示であるとの抗弁と不可分に結合しているものというべきであるから、たんに右売買契約の存することを当事者間に争いないものとすることは相当でない。よつて按ずるに右昭和三五年二月一八日当時被控訴人が控訴人に対して別紙三債権目録記載の債権合計金四二二万一、六七五円を有したことは当事者間に争なく、右事実と成立に争ない甲第三号証、第六ないし第八号証(但し第八号証については署名押印部分の成立に争がないから全部真正に成立したものと認める)、第九号証の一、二、第一一号証の一ないし三、乙第一ないし第三号証、第六号証の一、二の各記載、原審及び当審における被控訴人及び控訴人各本人尋問の結果(但し控訴人については後記信用しない部分を除く)に本件口頭弁論の全趣旨をあわせれば次のように認めることができる。すなわち、被控訴人は控訴人に対し昭和三四年中前記のような多額の債権を有するにいたり、これらを担保するため同年五月には控訴人所有の本件土地、地上に存する別紙二建物目録記載の建物(以下本件建物という。これが本件土地上に存し控訴人の所有に属することは当事者間に争ない)及び右建物内にある工場機械器具等につき金額五〇〇万円の低当権を設定したが、控訴人においてその債務の弁済をしなかつたので、被控訴人はこれらの担保の対象たる物件を処分して決済することを求め、同年七月一〇日には右物件中の織機等を代金二六一万円と評価してこれを被控訴人に譲渡し、これによつて右債務中同額の弁済にあてることを約したが、被控訴人はこれにかかわらずその後も債務の弁済を求め、とくに土地については控訴人の手によつてこれを他に売却して弁済にあてるよう求めていた。しかし控訴人においてその運びにいたらなかつたので、昭和三五年二月一八日にいたり、当事者間において本件土地を坪当り金四、〇〇〇円外に調査費金二、〇〇〇円合計金二四六万七、二四〇円と評価し、被控訴人においてこれを右金額を代金額として控訴人から買い受けることとし、この代金は控訴人の債務中同額の債務と対当額で相殺することとし、これとさきの機械類による代物弁済額との合計額と債務総額との差額八五万余円は被控訴人から控訴人に現金で支払うこととし、もし控訴人が同年一二月末日までに右代金額(差額として交付された金員を含む)に相当する金員を被控訴人に支払えば本件土地を控訴人に返還すべく、右期限内にその支払のないときは本件土地は被控訴人が確定的に自己の所有とし、そのさい控訴人は地上の本件建物を収去して本件土地を被控訴人に引き渡すべき旨を契約し、即日差額の一部六七万一、一五〇円、翌日二七万七、〇〇〇円(誤算のまま)を被控訴人から控訴人に交付し、翌一九日前記のように一八日付売買を原因とする所有権移転登記をしたこと、その後被控訴人はたびたび控訴人に対し本件土地を控訴人の手によつて他に処分して前記金額を弁済すべき旨を求めたが、控訴人において期限内にこれを実現することができなかつたので、被控訴人は本件土地はすでに昭和三五年一二月末日の経過とともに被控訴人において確定的に所有権を取得したものと主張するにいたつたという次第である。右認定に反する原審における証人新海玉蔵の証言、原審及び当審における控訴人本人尋問の結果は信用しない。右事実によつて考えれば本件土地について昭和三五年二月一八日当事者間になされた契約は形式的には売買契約としてなされているけれども(その限りでは控訴人の認めるところと同一である)、実質的には譲渡担保であり、当時存した債務中金二四六万七、二四〇円(但し差額として現金交付した分を含む)につきその弁済期を同年一二月末日とし、その担保のため本件土地所有権を被控訴人に移転し、もし右期限までに右金額につき弁済があれば土地は控訴人に返還されるが、その弁済がなければ土地は同額の債務の弁済のかわりに確定的に被控訴人の所有に帰する旨の契約であると解するのが相当である。

控訴人は右売買契約は通謀虚偽表示であると主張するところ、右契約は形式的には売買の体裁をとつているが実質的には譲渡担保であること右認定のとおりであるから、その限りで控訴人の右抗弁はその対象を缺くことになるが、なお譲渡担保としても通謀虚偽表示であるとの趣旨を含むものと解し得るから、さらにこの点について検討する。

当時控訴人が被控訴人以外の者に対しても相当の債務を負担していたことは弁論の全趣旨から明らかであるけれども、本件土地についての前記契約はこれら他の債権者の追及をさけるため被控訴人のすすめによつて真実所有権移転の意思なく、当事者相通じてした虚偽の意思表示であるとする原審証人新海玉蔵当審証人新海福代の各証言、原審及び当審における控訴人本人尋問の結果は前記乙第一ないし第三号証、第六号証の一、二、原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果とくらべて信用しがたい。控訴人が当時被控訴人に対し別紙四反対債権目録記載のような損害賠償債権ないし不当利得債権を有したことはこの点に関する控訴人の全立証によつてはまだこれを認めるに十分でないのみならず、当時から被控訴人はこれを争つていたこと弁論の全趣旨から明らかであるから、仮りに控訴人においてかかる債権ありと主張しても、被控訴人が異議なくこれに応じて控訴人に対する前記債権と清算決済すべきものとするとは解されず、そのことの故に前記契約が虚偽であるとする理由とすることはできない。また原審における鑑定人松尾良平の鑑定の結果によれば右契約当時である昭和三五年二月一九日現在本件土地の価額は三四九万余円であることをうかがい得るが、前認定の事実によれば右契約は単純な売買でなくて実質的には譲渡担保であり、控訴人は同年一二月末日までに債務を弁済すれば土地の返還を受け得るものであることが明らかであり、従つて控訴人としても直ちに本件土地所有権が失われるべきものとは予想しなかつたものと推認すべきであるから、その契約に定められた金額が時価に比して若干低額であることはなんら怪しむに足りず、このことから右契約が通謀虚偽表示であるとすることもできない。さらに控訴人は本件土地上の本件建物をアパートに改造し、これによつて生計をたてようとし、そのための改造費六七万余円をそのころ被控訴人から借り受けたものであるから、その敷地である本件土地を被控訴人に売り渡し、地上の建物を収去しなければならないような取りきめをするはずがないと主張する。しかし前記契約はその実質譲渡担保であること前認定のとおりであり、控訴人がその債務を期限までに弁済し得れば当然控訴人は本件土地所有権を保持し得たのであるから、右契約自体は必らずしも控訴人の計画とむじゆんするものではないのみならず、被控訴人がそのころ控訴人に交付した金六七万円余は前記差額の一部であること前認定から明らかであつて(従つて前記期限までに返済されるべき金額の一部をなすという意味では控訴人主張のとおり貸金であるとすることは不当ではない)、これが右改造費にあてられたとしても、そのことから右契約を虚偽とするには当らず、むしろ前記甲第三号証の記載と前認定の事実をあわせれば昭和三五年一二月末日までに控訴人において前記金額の弁済をしないときは本件土地は確定的に被控訴人の所有に帰すべく、そのさいは控訴人は地上の本件建物を収去し、居住者に対する関係も控訴人において責任をもつて処理し、被控訴人に損害はかけない旨を誓約していることが明らかであつて、これによれば当事者双方とも最悪の場合は地上建物を収去して本件土地を明け渡すべき仕儀にいたるべきことをあらかじめ了知して、それでもやむを得ないものとしてその場合に処することをとりきめ、もつて右契約をしたものというべき消息をうかがうに十分であり、真実その意味において前認定の約旨のとおりの意思であつたものというべきである。その他に右契約が当事者相通じてした虚偽の意思表示であることを認めるべき的確な証拠はない。よつて控訴人の右抗弁は採用しない。

しからば本件土地は昭和三五年一二月末日までに控訴人が前記債務を弁済しなかつたことにより確定的に被控訴人の所有に帰したものというべく、控訴人が本件土地上に本件建物を所有することは当事者間に争なく、控訴人が右建物を所有することによつて本件土地を占有するについて被控訴人に対抗すべき正権原を有することは控訴人の主張立証しないところであるから控訴人は被控訴人に対し本件建物を収去して本件土地を明け渡すべき義務があることが明らかであり、これを求める被控訴人の本訴請求は理由がある。

よつてこれを認容し、これと同旨(原判決は収去すべきものとして本件建物のほかその他の地上物件一切と表示するが、本件土地上にあるものとしては本件建物のほかとくに主文で収去を命ずべきかくべつの物件はなく、すべて本件建物収去、土地明渡の内容に含まれるものであることは弁論の全趣旨から明らかであるから、原判決の結論は本判決と異なるものではないというべきである)の原判決は相当であるから、本件控訴は理由のないものとしてこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

別紙一

土地目録

(一) 静岡県浜名郡湖西町鷲津一六九一番の一

一、宅地五八三坪三合一勺

但し右は左記八筆を合筆したもの

(1) 同所一六九一の一宅地二一三坪九合一勺

(2) 〃 一六九一の二宅地 二七坪

(3) 〃 一六九一の三宅地一四六坪

(4) 〃 一六九二の一宅地 一三坪

(5) 〃 一六九二の五宅地 二一坪三合六勺

(6) 〃 一六八九の一宅地 二五坪

(7) 〃 一六八九の四宅地 一三坪

(8) 〃 一六八九の五宅地 一〇坪

(二) 同所一六九二番の六

一、宅地六坪七合七勺

(三) 同所一九四三番の三

一、宅地一一坪

(四) 同所一九四三番の四

一、宅地三三坪

別紙二

建物目録

浜名郡湖西町鷲津一六八九番の一

〃     一六八九番の四

〃     一六八九番の五

〃     一六九一番の一

〃     一六九一番の二

家屋番号  鷲津一二三番の三

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建寄宿舎   一棟

建坪   六坪

一、木造スレート葺平家建工場       一棟

建坪   百三十坪五合

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建工場    一棟

建坪   四十三坪三勺

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建倉庫    一棟

建坪   二十坪五合

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建寄宿舎   一棟

建坪   九坪

一、木造瓦葺平家建作業場         一棟

建坪   十二坪五合

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建作業場   一棟

建坪   二十四坪九合一勺

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建玄関    一棟

建坪   二坪九合二勺

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建食堂    一棟

建坪   六坪一合五勺

浜名郡湖西町鷲津一六九一番の一

家屋番号  鷲津一二三番の四

一、木造瓦葺二階建居宅          一棟

建坪    三十二坪三合一勺

二階坪   二十五坪三合一勺

別紙三

債権目録

(一) 二〇五万円

静岡地方裁判所浜松支部昭和三三年(ワ)第一二三号事件において昭和三四年四月一五日鷲津紡織株式会社と控訴人及び利害関係人たる被控訴人間に成立した調停にもとずき被控訴人が控訴人の右鷲津紡織に対し負担する債務の連帯保証人として同月三〇日同会社に弁済した金額についての求償権

(二) 七八万円

右調停にもとずき被控訴人が控訴人の静岡県中小企業振興資金に対して負担する債務の保証人として同年六月三〇日外一回に同資金に弁済した金額についての求償権

(三) 五万一、〇九五円

同年八月二六日控訴人が旭織物株式会社に対して負担する債務を被控訴人において立替え支払つたことによる立替金債権

(四) 一、七七〇円

同年九月一日同様遠州織物工業協同組合への立替払による立替金債権

(五) 三、〇一〇円

同年五月一三日同様司法書士近藤正巳への立替払による立替金債権

(六) 三万五、三〇〇円

同年五月一四日同様司法書士小島敬一への立替払による登記料等立替金債権

(七) 八万三、〇〇〇円

同年五月一六日同様中部配電株式会社への立替払による立替金債権

(八) 一一八万円

機械商たる被控訴人が織布業者たる控訴人に対し昭和三〇年一月ごろから昭和三四年五月ごろまでに売渡した機械等代金の残額

(九) 二、五〇〇円

昭和三三年五月ごろの貸付金

(一〇) 三万五、〇〇〇円

荒捲整縫機売掛金(昭和三四年五月ごろ)

以上合計四二二万一、六七五円

別紙四

反対債権目録

(一) 三七〇万五、〇〇〇円

控訴人は従来九〇台の織機を有し、かつ同台数につき織機登録権(所属の遠州綿スフ織物工業組合を通じて日本綿スフ織物工業組合連合会に織機一台毎にその型式、筬巾等を登録し、右登録を受けた機械でなければ稼働できないこととなつているため、この登録を経由したものであること自体一の財産的価値を生じ、織機とともに売買、譲渡等処分の対象となる。これを仮りに登録権という)を有したところ、被控訴人は昭和三四年一〇月三日から同年一一月一八日の間にそのうち五七台分の織機登録権を勝手に他に売却処分し、その代金三七〇万五、〇〇〇円(一台分六万五、〇〇〇円)を取得し、控訴人に同額の損害をこうむらせたから、これにより控訴人は被控訴人に対し同額の損害賠償債権か、不当利得返還請求権を有する。

(二) 四二〇万円

控訴人は昭和三四年九月中その所有の鈴木式織機三〇台を訴外稲葉織布工場とその所有の遠州織機製四〇台の織機と交換し、鈴木式三〇台の引渡をしたが、交換した四〇台はそのまま一時右工場に預け、その後その引取方を被控訴人に依頼したところ、被控訴人はそのころこれを引取つた上、これを控訴人に引渡さず、同年一〇月ごろから一二月ごろまでの間に勝手にこれを訴外共田織布工場等に売却処分し、その代金少くとも右四〇台分の時価四二〇万円を取得し、控訴人に同額の損害をこうむらせたから、これにより控訴人は被控訴人に対し同額の損害賠償債権か、不当利得返還請求権を有する。

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